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バックナンバー2001.10.15
提供:キューバ共和国大使館
 テロ事件に関するキューバ共和国政府声明ならびにカストロ議長演説
 
(1) キューバ共和国政府声明 (2001年9月11日)

キューバ共和国政府は、本日午前ニューヨークとワシントンの民間および政府施設に対して行われ、数多くの犠牲者を出した暴力的奇襲攻撃のニュースを、痛みと悲しみをもって受け取った。

すべてのテロ行為に反対するキューバの立場はよく知られている。我が国国民が40年以上にもわたってアメリカ領土内から推進されたテロ行為の犠牲になってきたことを忘れることはできない。歴史的理由からも、またモラル原則からも、我が国政府は上記の施設に加えられた攻撃に対し全精力をかけて反対・糾弾するとともに、これらの攻撃によって引き起こされた正当化不可能な痛ましい人命の損失に対し、アメリカ国民に最も深い哀悼の意を表明するものである。

この鎮痛の時、我が国国民はアメリカ国民と連帯し、本日朝起きた事件によって生まれた犠牲者の治療・看護・リハビリのために、ささやかな可能性の中ではあるが、アメリカの保健施設、その他いかなる医療あるいは人道的施設とも協力する用意があることを表明する。
2001年9月11日、ハバナ市

(2) キューバ共和国政府声明
 まだ、すべてを失った訳ではない
 (2001年9月19日)

アメリカ国民に犠牲をもたらした去る9月11日のテロ攻撃の悲惨で残忍なニュースは、苦悩や苦痛、憎しみや激しい怒りの感情に満ちた映像で、全世界に衝撃を与えた結果、不気味にも、それら自体がテロや、今日世界中に広がった深刻な緊張の根源となっている古い方法や主張を復活させる役割をになうこととなった。

今実行しなければならない唯一のことは、テロやその他の悲劇に対して冷静で勇気ある全世界的同意を得るような決定的な解決法を探ることであるにもかかわらず、第二次世界大戦以前ですら聞いたことがないような、アメリカの指導者や有力政治家の冷たい怒りと復讐心に満ちた声が聞こえてくる。

真面目な人ならだれでも、本当に求めているものは正義なのだろうか、それとも痛ましく途方もない悲劇を、また世界で最も強大な国家の独裁につながりかねない方法や特権や特典を、何の制限や制約もなしに地球上のすべての人々に押し付けるのに使おうとしているのだろうか、と自問自答してもおかしくはないだろう。

何人かのアメリカの政府高官は、米国の政府機関や雇用者による暗殺の権利について、すべての規制解除を明確に宣言している。そのためには最もたちの悪い犯罪者の使用もいとわないと。

そのような特権は、アメリカの統治者により、1961年のパトリシオ・ルムンバの場合のように、愛国的指導者たちを抹殺するために用いられた。クーデターや大量殺戮が組織され、数百数千という人々の命が犠牲となり、拷問を受けたり、行方不明になったり、何らかの方法で抹殺された人々は数百万人に上った。キューバは国家の指導者たちにたいする数百件にのぼる暗殺計画を告発してきた。それらの責任者や、我が国の国民にかなりの数の犠牲者を生じさせた数え切れないテロ行為の首謀者に罰を科すよう求めつづけている。キューバにたいして行われたうちの、これら数件の事実を調査・告発したアメリカの上院議員がいた。いろいろ仕掛けが用いられ、殺すためのあらゆる野蛮な、おぞましい方法がとられた。すべての知恵がそのような目的のために推進された。

国際社会は、地球上にカオスや血まみれの出来事の種を蒔くための大義名分を認めるためにアメリカを支持したのではないし、そのためにアメリカ国民に心からの哀悼の意を表明したものでもない。テロと同様に深刻で、最も忌むべき形の一つは、一つの国家が世界のどんなところでも秘密裏に法的規範や裁判や証拠もなしに、殺す権利を有すると宣言することだ。そのような政策は野蛮で非文明的なものであり、平和と国家間の共存を可能にしている規範や法的基盤を覆すことになるだろう。パニックと事件がもたらした混乱状況にあって、各国の指導者たちは、国際社会にそのようなやり方を導入することの意味の重大さにもかかわらず、幾つかの例外を除いては、そのような発言がもつファシスト的、テロリスト的兆候について一言も発していない。

その結果として最初に出てきたのは、数百件の外人排斥行為と国籍や宗教の違う人々へのテロである。アメリカ国民は、それがどんなに嫌悪すべきものであっても、テロと戦うために、冷静に人を殺したり、法律を破ったり、証拠無しに罰したり、基本的公平と正義の原則を否定するような乱暴な方法をとることに決して賛成はしないだろう。そのようなことは、地球を「ジャングルの法律」に向かわせるやりかただ。アメリカは汚れ、その権威は失墜し、今日の苦しみや悲しみの原因となっている憎しみを募らせるだろう。アメリカ国民は復讐ではなく正義を求めているのだ。

キューバは最初から、現在の世界の問題は武力では何一つ解決しないと言っている。テロに対しては一つの意識形成が必要であり、人類の生存さえ危機に陥るような、あちこちの紛争や悲劇をなくすことができるような地球全体の団結が必要だ。常ならぬ戦いの太鼓が響いて、血にまみれた結末を迎えるように見えても、まだすべてが失われたわけではない。アフガニスタンの学識者たちや、従来勇ましく勇敢な国民を代表する聖職者たちが抜本的な決断をすべく会合をもっている。もし、彼の国に住む事件の容疑者に罪があるなら、裁判とそれにともなう処置の適用に反対はしないと表明している。彼らが要求したのは単に証拠と公平な対処を保証することであり、そのことは国連が国際社会の完全なる支持を得て完璧に保証することができる。もしアメリカ政府が強く断定しているような証拠が実在するなら、そして聖職者たちが死を賭しても守り抜く彼らの深い信仰を踏み越えるような要求をしなければ、戦争に代るものを見つけることが出来るだろう。
彼らの要求しているものがモラル的に反論の余地のないもので、それらが考慮されるならば、彼らは無意味に国民を犠牲にすることはないだろう。それはテロのない、処罰を免れた犯罪もない平和と正義のための真の世界連合への大きな第一歩になり得るかもしれない。川を血で染めるのを避けることが出来るかもしれない。キューバは迷うことなくこのような解決方法を支持するだろう。一分たりとも時間を無駄には出来ない。もうほんの僅かしか時間は残っていない。この基本的な、簡単な、そして可能な努力をしなければ、不当な戦争になるだろう。

ハバナ、2001年9月19日
キューバ共和国政府


(3) ハバナ市サンアントニオ・デ・ロス・バニョ地区における「革命公開演壇」でのキューバ共和国フィデル・カストロ・ルス議長の演説

(2001年9月22日)

同胞の諸君、
根深い原因が何であれ、その原因を世界にもたらした経済的・政治的要因が何であれ、その重大な責任が誰にあろうと、テロリズムは倫理的な観点から擁護することができない危険な現象であり、根絶しなければならない。このことは誰にも否定できない。
その映像が世界を震撼させた、人的被害の大きさと何千人もの無実の市民の突然で無残な死がアメリカ国民にもたらした心理的影響によって、国中が怒りに包まれている状態であるのは理解できる。しかし、このことは誰を利するのか。極右勢力、最も反動的な勢力、世界で増殖しつつある抵抗を押し潰し、世界に残っている進歩的勢力の息の根を止めたいとする者たちを利する、重大な過ちであった。この行為の組織者、責任者が誰であったにせよ、大きな不正義であり、重大な犯罪である。
 しかし、正義の名のもとに、「無限の正義」という奇妙な名目で、無責任に戦争を開始するために悲劇を利用することはできない。その戦争は、実際上無実の人々に対する際限のない殺戮になる。
 そのような戦争のための基盤、概念、真の目的、気力、条件は、ここ数日間に急速に整えられた。それが最近になって考えられたものだとは誰にも思えない。機会を狙っていたのだ。いわゆる冷戦終結後も軍備拡張を続け、人類を滅亡させるに足る近代兵器の開発を行ってきた者たちは、巨額の軍備投資によって、世界の他の諸国民に完全支配を押し付ける特権がもてることを知っていた。帝国主義のイデオロ−グは自分たちが何をしているか、何のためにそれをしているかを知っていた。
 アメリカ国民に対する狂気で残虐なテロ攻撃を前に全世界の人々が衝撃を受け、心から悲しんでいるなかで、すでに特権的な立場にあった極右イデオローグと最も好戦的なタカ派は、この世界一強大な国の指揮権を手中に収めた。彼らの軍事的技術的可能性は無限大に見える。彼らの破壊能力、殺戮能力は巨大であるが、逆に彼らの冷静さ、公平、熟慮、抑止の習性は最低である。
 諸要素の結合──その中では他の富める強力な国々の共犯、特権の共有も除外されるものではない──、日和見主義、混乱、パニックの蔓延により、もはや血なまぐさい予測不可能な結末がほぼ避けられなくなっている。
 展開される軍事行動がどんなものであれ、最初の犠牲者は貧しい低開発世界に住む何十億の人々である。低開発世界は今、深刻な経済社会問題に直面し、支払不可能な債務と破滅的な一次産品の価格、進行する自然環境の破壊、飢えと貧困、多くの栄養不良の児童と青年、成人を抱え、凄まじいエイズの流行、マラリア、結核、伝染病によって民族絶滅の脅威に晒されている。
 深刻な世界経済危機は、すでに疑いのない現実的な事実となり、主要な経済力をもつすべての地域が例外なく影響を受けている。その危機は新たな状況のもとで否応なく深刻化し、圧倒的多数の国民が耐えがたいものとなった時、全世界に混乱と反乱、統治不能な状況が生まれるであろう。
 その代価は、富める国々にとっても、支払い不能なものとなろう。何年にもわたり、環境やエコロジーについて、構想さえも、すでに実施し証明された調査や自然保護プロジェクトについても、必要な力で語られることはないであろう。何故なら、そのための空間と可能性は軍事行動によって、「無限の正義」の名のもとに行おうとしている戦争、そのような無限の犯罪によって使われようとしているからである。
 ほんの36時間前のアメリカ大統領の議会演説を聞いた後、何らかの希望が残っているのであろうか。
 演説者に対し攻撃的な形容詞や判断、言葉を使わないようにしようと思う。今のように熟考と冷静さが必要な深刻で緊張した瞬間には、それはまったく不必要であり時宜を得ないからである。一部の短い語句を強調するにとどめよう、それがすべてを表すから。
「我々は必要なすべての武器を用いよう」
「一度の戦闘だけでなく、これまで経験したことのない長い作戦を予期するべきだ」
「世界のあらゆる地域のあらゆる国は決断しなければならない、我々と共にあるか、さもなくばテロリストにつくかだ」
「私は軍に警戒態勢をとるよう命じた。それには理由がある。米国が行動する時がまさに来ようとしており、我々はあなた方のことを誇らしく思う」
「これは世界の、文明全体の戦いだ」
「私はあなた方の忍耐を望む・・・これは長い戦いになるだろう」
「我々の時代の成果とすべての時代の希望は、我々にかかっている」
「この紛争がどんな方向に進むか分からない。しかし、結末は明らかだ・・・神が味方をしてくれる」
 私はすべてのキューバ人にこれらの語句に含まれる意味を深く冷静に考えてみて欲しい。

・「我々と共にあるか、さもなくばテロリストにつくかだ」
世界のどこの国でも、強大国でさえも、ジレンマから逃れられないし、戦争や攻撃の脅威から逃れることは出来ない。
・「すべての武器を用いよう」
核兵器、化学兵器、生物学兵器、その他──それがいかに大量殺人兵器であっても、倫理的観点からの何らの脅威を問題とせず、いかなる手段も除かれるものではない。
・「短い戦闘ではなく、これまで経験したことのない、長年にわたる長い戦争になるだろう」
・「これは世界の、文明全体の戦いだ」
・「我々の時代の成果とすべての時代の希望は、我々にかかっている」
最後に、政治演説でこのような告白を聞いたことがない。まさに戦争前夜、黙示録的終末的危機の時代の戦争前夜だ。
・「この紛争がどんな方向に進むか分からない。しかし、結末は明らかだ。神が味方してくれる」
驚くべき明言である。今まさに開始されようとしているこの奇妙な聖戦の現実の部分と想像の部分について考えると、私はどちらの側がより狂信的なのか分からないと思う。
 木曜日、アメリカ議会で、いかなる種類の法や国際的制度も持たず、排他的な力の庇護のもとにある世界的軍事独裁の姿に語られた。現在の危機においてまったく無視されている国連は、いかなる権威も特権も持たないだろう。あるのは一人だけの主人、一人だけの判事、一つだけの法律となろう。我々すべては、米国につくか、テロリストにつくかの決断をするよう命令を受けた。
 キューバは最も長い年月にわたり最も多くのテロ攻撃を受けた国としてのモラルの力を持っている。その国民はどんな事態も恐れない。世界にはキューバ国民を威嚇できる脅威も権力もない。そのキューバ国民はテロリズム反対と戦争反対を宣言する。もはや可能性は遠くなったが、責任者自らがどのような展開をするか分からないと告白した、予測不可能な結末をもたらす戦争を避ける必要性を重ねて訴える。同様に、テロリズムの完全な根絶のためにすべての国々と協力する用意があることを重ねて表明する。
 誰か客観的で冷静な友人がアメリカ政府に、自国の若い兵士たちを曖昧な戦争のために、遠い辺境の地に向かわせないよう忠告すべきだ。何処にいるのか、あるいは実際にいるのかさえも分からず、殺す相手が、アメリカの無実の同胞の死に何らかの責任があるのかないのかさえも分からない、まるで幽霊を相手にするような戦いに向かわせないよう忠告すべきだ。
 キューバは決してアメリカ国民の敵にはならないことを宣言する。彼らは、憎しみと復讐を植え付けるための前例のないキャンペーンに晒されている。これは極端にも、平和を求める音楽まで妨げるに至った。キューバは代りにその歌を自分のものとし、告げられる血みどろの戦いが続く間、子どもたちさえもそれらの平和の歌を唄いつづけるだろう。何が起ころうと、キューバは我が国の領土がアメリカ国民に対するテロ行為に使われることを許さない。アメリカ国民に対するそのような行為を回避するために、我々の手の届く限りのすべてのことを行う。今日我々は、アメリカ国民に冷静さと平和を呼びかけ、我々の連帯を表明する。いつか我々の正しさが証明されるだろう。
 もし、我々が侵略されることがあったら、我々は名誉にかけて我々の独立、原則、社会的成果を最後の血の一滴まで守り抜く。
 それをするための口実を作るのは簡単ではないだろう。すでにすべての武器を用いる戦争について語られているが、それはとくに新しい経験というわけではない。約40年前、キューバに対して、何百という戦略及び戦術核兵器の矛先が向けられたが、キューバ人は誰一人として揺らぐ者はいなかった。
 我々は、その英雄的な国民の息子たちだ。そしてかつてないほど愛国的革命的意識が高まっている。今は冷静さと勇気が必要とされるときだ。
 世界は気づくであろう、そして世界を脅かし、苦しみをもたらそうとしている恐ろしいドラマを前に、キューバ国民の声に耳を傾けるであろう。
 キューバ人にとって、今まさにかつてない強い誇りと決意をもって宣言するときだ。
社会主義か死か、
祖国か死か、
我々は勝利する、と。


(4) シエゴ・デ・アビラ市における「革命公開演壇」での
 キューバ共和国フィデル・カストロ・ルス議長の演説

(2001年9月29日)

 同胞の諸君、
 平和的解決はまだ可能だ。
 現在の緊張状態のもとでは、誰でも演説原稿を書くとき、内容が既に遅すぎるというリスクが伴う。私も楽観的過ぎに見えるというリスクを負う。決してそうではないが。しかし、私は自分が思っていることを言う義務を果たす。
 9月11日のアメリカ国民に対する狂気のテロ攻撃が、テレビの画像を通じて直接それを目の当たりにした全世界の人々に与えた衝撃は、多分終わりのないものになるであろう無益な戦争を行うことなしにテロリズムを根絶させるための又とない条件をつくった。
 アメリカでのテロ行為は、世界のどこで行われようと同じであるが、客観的に正しいと思われる正義のために闘う諸国民に多大な被害を与える。
 テロは常に、人類の最悪の敵達にとって、諸国民の自由への闘いを押し潰し弾圧するための手段であった。真に崇高で正しい正義のための手段とは決してなりえない。
 歴史を通じて、ほとんどすべての民族独立のための行動は、アメリカ国民の例も含めて、武器を使用して行われた。誰もその権利を問題にしなかったし、これからもしないだろう。しかし、闘いの手段として罪もない人々を殺戮するために意図的に武器を使用することは、絶対に糾弾されなければならない。歴史上の抑圧国家によるテロリズムと同様に邪悪なものであり、低劣で非人間的な行為として根絶されなければならない。
 現在の危機では、戦争なしにテロリズムを根絶する現実的な可能性があるにもかかわらず、最大の障害は、アメリカの主要な政治的軍事的指導者が、武器の使用に反対しこの憂慮すべき問題の効果的な真の解決をさぐろうとする声に全然耳を貸そうとせず、血を一滴も流さず解決できたならアメリカ国民にとって非常に大きな名誉になるであろうということに思いも及ばないことである。決定を行う指導者達は唯一戦争行為に賭け、名誉と戦争を結び付けている。まるで一杯の水でも飲むような単純な事のように核兵器の使用を口にする者や、特殊部隊によるゲリラ戦術を使うという者、嘘を武器として使用することまで考えた者もいる。もっと理性と常識のうえに立って発言する人達もいなくはないが、すべてが戦争の方向に動いている。客観性と冷静さは少ない。多くの市民の間に、たとえアメリカ人の命が失われようと唯一の道は戦争だという考え方が植えつけられた。
 通信、技術、物質的条件が石器時代から抜け出ているようには思えない国との戦いの最終的戦略、戦術がすでに決まっていると結論づけるのは難しい。航空母艦隊や戦艦、巡洋艦、潜水艦を使う海のない国とのゲリラ戦術とは? さらに何十台ものB−1、B−52爆撃機、何百台もの近代的戦闘機、何千台ものミサイル、その他の戦略兵器を何故送るのか? 何に対して発射するのか?
 他方、その外の世界では、混乱とパニックが支配的であり、日和見主義や我田引水、国益優先主義もある。自らの誇りを粉々にした者もいる。当初の足並みの不揃いの結果、頭を隠す穴さえないのに、本能的に見て見ぬ振りをするという奇妙な傾向が広がっている。
 9月20日にアメリカの議会演説で、例外なく他の全ての国々の独立の終止と国連機能の停止が宣言されたことに多くの人が気づいていないように見える。
 しかし、戦争行為が現実なものとなり、その恐ろしい画像が流れ次第、諸国民と多くの良心的な政治指導者が反対行動を止めるなどと幻想をいだくことはできない。戦争が現実になったら、その画面はニューヨークの事件の衝撃的で悲惨な映像にとって替わるだろう。その悲惨な映像が忘れ去られたら、アメリカ国民との連帯感情の損失は取り返しのつかないものとなろう。今日それが、予測不可能な結果をもたらす戦争の必要なしに、そして罪のない多数の人々の死なしに、テロリズムという現象をなくすための根本的な要素になっているのだが。
 すでに最初の犠牲者が出始めている。戦争を避けて逃げ出す何百万の人々や青白い顔の子供達の姿は世界中の人の心を動かし、それが知れ渡るのを何も阻害できない。
 イスラム国家の人々の強固なナショナリズムや深い宗教心を、金や援助の約束によって変えることができる、あるいは武力によってこれらの国々に無限の脅威を与えることができると信じるのは、アメリカやNATOの裕福な同盟国の誤りである。タリバン政権とは無関係の主要な国々の宗教指導者達の声明が聞かれるようになったが、誰もが軍事攻撃には断固反対を表明している。中央アジアや南アジアにあるアメリカの同盟国同士の間でも矛盾が出始めている。
 すでにイスラム国家に対し、外国人排斥、憎悪、侮蔑などの気運が出始めている。つい最近ある重要な欧州政府首脳がベルリンで述べたのは、西洋文明はイスラム文明より優れており、西洋は、それがイスラム文明との対決を意味するにしても、今後も諸国民を征服し続けてゆくであろう、イスラム文明は1400年前の状態に留まったままだと言う内容であった。
 今日世界が直面する経済情勢のなかで、そして近代兵器の破壊力とは無縁の理由によって引き起こされた人類の生存そのものまで含めて重大な諸問題が解決されずに残っているとき、何故解決の糸口が見つからなくなる複雑な戦争を始めようと固執するのか? アメリカのリーダー達は何故これほど気負っているのか? アメリカの巨大な力は少しでも寛容の意を示すという特権を持ち合わせてないのか?
 奪い取った権限を国連に返すだけで十分ではないのか? 国連の最も普遍的で代表的な機関である国連総会がその平和のための闘いの中心となり、世界の世論の一致した全面的支援を得てテロリズムの根絶を図るのがよいのではないか? その場合、ほとんどがNATO同盟国である安保理常任理事国の一方的な拒否権発動によっていかに権限が制約されているかは意に介せずに。
 アメリカ国民に対する野蛮な攻撃の責任者は、誰であるのか特定されたなら、何人であろうと絶対に処罰されずには済まない。すべての国に納得の行く条件は、証拠の信憑性と正義の確実性が保証されたうえで、裁判が公正に行われることである。
 キューバはテロリズムに対する国際的な闘いの必要性について最初に述べた国である。9月11日のアメリカ国民の悲劇の数時間後以下のように述べた。「世界が抱えるどんな問題も力によって解決することはできない。・・・国際社会はテロリズムに対する世界的な意識を形成する必要がある。・・・国際的合意と国際世論の力を求める賢明な政策のみが問題の抜本的解決になりうるのだ。・・・これほど異常な行為はテロリズムに対する国際的な闘いを生み出すのに役立つであろう。・・平和と国際協力の政策をすすめなければ、世界に救いはない」
 我々はこれらの視点を堅持する。
 国連の平和への機能を取り戻すという方式は不可欠である。
 第三世界の国々は──敢えてほぼ例外なくと言うが──政治的宗教的な違いはあっても、戦争の代わりとしてテロリズムに対する闘いのためには世界の国々と団結する用意があるであろうことは疑いの余地がない。
 これらの考えは、先に述べた国家のどれにとっても、その名誉、尊厳、支配的な政治的宗教的原則を何も傷つけるものではないと思う。
 私は貧しい低開発世界のどこかの国を代表して言っているのではない。深い信念から、そして何世紀もの間搾取され辱められてきたそれらの国々の人々の悲劇から言っているのだ。そこでは、戦争がなくとも従来からの貧困と低開発、飢え、治療可能な病気によって、年間約一千万人の人々が沈黙のうちに死んでいる。
 これらの国の人々にとって、誇りと独立を維持し、戦争することなく平和を守ることは、自由な人々が住む真に公正な世界を実現するために、我々が団結してすすめるべき闘いの要石である。
 いかなる経済的利益も、日和見主義も、ましてや脅迫や危険に対する恐怖も、何もキューバを動かすことはできない。経済戦争、封鎖、テロリズムに対して40年以上にわたり名誉をかけて抵抗してきたことでよく知られるキューバ国民は、これらの視点を重ねて表明し主張する権利を持つ。そして最後の瞬間までそうすることをためらわない。
 我々はテロリズムと戦争に反対する。これからも反対し続ける。何事が起ころうと我々はこの方針を堅持する。
 今日地平線の彼方に立ち込める暗雲も、キューバ人が立派な社会的文化的プログラム実現のために留まることなく奮闘するのを妨げることはできない。我々は今歴史上他に例のない人間的課題を実現していると自覚している。予測される戦争が単なる夢に変わるなら、我々は名誉をもって最後までその夢を守り続けよう。
 革命万歳、社会主義万歳、
 祖国か死か、
 我々は勝利する。
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