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ブッシュとカストロ

 目次
 ブッシュとカストロ(1)
 資料「米国政府のライバルの宣言」
 ブッシュとカストロ(2)
 ブッシュとカストロ(3)
 資料「キューバ国民解放のための新措置を提案する」(自由キューバ支援委員会の提案)
ブッシュとカストロ(1)
 イラク情勢が混迷を深めるとともに、米国の攻撃の標的がキューバに向かっている。カストロ議長暗殺の危険も指摘されている。イラクのサドル師の例をとってみても、可能性は否定できない。実際、米国のある反キューバ強硬派議員は公然と暗殺実行を要求している。
 このキューバ・米国間の緊張の高まりには、イラク情勢の混迷に加えて、大統領選挙の接近が大きく関わっている。4年前の大統領選挙においてフロリダの開票をめぐり最後まで混乱したことはまだ記憶に新しい。再選を目指すブッシュ大統領にとって亡命キューバ人が多く住むフロリダの票の行方はきわめて重要である。マイアミの反キューバ強硬派は、大統領選挙までの期間をキューバ侵攻のための最後のチャンスと捉えている。
 米国政府は、5月6日、キューバ制裁強化政策を発表した。これはノリエガ国務次官補が発表したもので、「自由キューバ援助委員会報告」と名づけられている。米国のキューバ制裁法はイラクや北朝鮮の場合とは比較にならないほど、厳しい。世界で最も厳しい制裁法だといわれているが、その特徴のひとつは、キューバの「民主化」のために、直接のキューバ制裁だけではなく、投資をしたり、援助をしたり、キューバと交渉をもつ国や企業にも制裁が課されることだが、今回の措置は外国のNGOも含めあらゆる勢力を動員して、キューバを孤立させ、体制の崩壊を図るという、きわめて多面的な政策になっている。「地球上から消滅することもあり得る」とキューバが懸念するのも理解できる。
 このように一触即発の状態の米・キューバ関係だが、しかし、その一方では、つい先ごろまで、米国の食糧輸出実現など両国間の関係改善を期待させる動きも見られた。実態はどうなっているのかという思いもある。
 最近、キューバ情勢について日本のマスコミではあまり取り上げられることがない。そこで、少しずつ資料や状況をまとめてお伝えすることにしたい。
その第一弾として、5月14日にハバナで行われた120万人デモにおいて、カストロ議長が米国利益代表部の前で読み上げた「米国政府のライバルの宣言」をお届けする。イラク占領を通じて、ブッシュ政権のイラク政策の真意や、その世界戦略や政策が次第に透けて見えてきたが、この「ライバルの宣言」には国際世論の共通の認識となりつつある思いが表現されている。
 ブッシュ政権が目指す「自由キューバ」とは市場経済体制の導入を意味する。それを拒否し、米州自由貿易圏形成に反対するカストロは独裁者ということになる。これにたいし、カストロ議長は「ライバルの宣言」においてどのように応えているか。ここには「キューバ独立の父」であり、ヒューマニズム思想家として知られる「師マルティの弟子」であると自称するカストロのものの考え方を髣髴させるものがある。
(神奈川大学教授・後藤政子)
 
「米国政府のライバルの宣言」
ジョージ・W・ブッシュ氏へ
 今日、100万人のキューバ人が集い、貴国の利益代表部の前でデモ行進をしている。だが、これは事情が許すならばわれわれとともに集うことを望みながら果たせなかった勇敢な国民のほんの一部にすぎない。
 この集会は米国民に敵対するものではない。われわれはかれらの倫理あるルーツについて良く知っている。それはこの西半球に最初の巡礼者がやってきた時代にまで遡る。われわれはまた、この利益代表部の役人や職員や警備員たちを悩まそうというのでもない。かれらはわれわれのような教養豊かな人民が提供し得る安全と保障を享受している。このデモは諸君の政府が最近、わが国にたいしてとった野蛮で、無慈悲で、残虐な手段に対する怒りの抗議行動であり、それを非難するためのものである。
 ここで行進する人々について、あなたがどのように考えているのか、どのように人々を信じ込ませようとしているのか、われわれにはよくわかっている。あなたにとっては、自由を希求する抑圧された大衆が、キューバ政府によって街頭に出るよう強制されたということになるのだろう。しかし、あなたに理解できないのは、地球上でもっとも強力な大国の敵意と封鎖と侵略に45年間も抵抗してきた品位ある、高尚な人民は、世界のいかなる力をもってしても、家畜のように首に縄をしばりつけて引っ張り出すことはできないということだ。
 政治家ないしは政治家であると自負する者が知らなければならないことは、正しくかつ真に人間的な思想は、歴史上、力よりもずっと有効だったということである。力からは埃まみれの、卑しい廃墟しか残らない。正しくかつ真に人間的な思想からは、何人にも消し去ることのできない輝かしい偉業が残る。いつの時代も、良かれ悪しかれ、そうであったし、歴史はその積み重ねなのだ。しかし、今、私たちが生きているこの時代は、野蛮で、非文明的で、グローバル化された世界にあって、もっとも希望のない、不確かな、最悪の時代である。
 あなたが今日、押し付けようとしている世界には、倫理や信頼や正義の規範や人間的感情にたいする最小限の配慮も、連帯や寛大さに関するもっとも基本的な原則も存在しない。
 あなたの世界や、あなたとともに地球を収奪している同盟者の世界においては、人権に関していかなることが記されていようと、すべてとてつもない嘘である。数十億の人間が飢餓のうちに生き、十分な食糧も、薬も、衣服も、靴も、住宅もなく、非人間状態に置かれ、みずからの悲惨さや、世界の悲惨さについて理解するための最小限の知識も、十分な情報ももてないでいる。
 本来であれば救えるはずの何千万という子どもや、若者や、母親や、中高年者が、毎年、この「エデンの園」で、すなわち地球上で死んでいることを、誰もあなたに伝えなかったに違いない。また、どのくらいのスピードで、人間生活にかかわる自然条件が破壊され、3億年もかかって生成された石油が、たった1世紀半の間に、恐るべき害を残しつつ、浪費されてしまったかということも伝えなかったに違いない。
 あなたにとっては、地球上の生命を終焉させるのに十分な、あなたの兵器庫にある何万という核兵器や、化学兵器や、爆撃機や、正確な照準長距離ミサイルや、戦艦や、空母や、通常兵器や、非通常兵器の正確な数を、補佐官に報告させるだけで十分なのだろう。
 だが、あなたも、また誰も、ゆっくりと眠ることはできない。兵器庫の発展競争をするあなたの同盟者もそうだ。責任指数の低さ、政治手腕、国家間の不均衡、そして、外交議定書や会合や顧問が行き交うなかでの省察意識の欠如を考えれば、人類の運命を握る人々がまさに精神病棟と化した世界の政治を、困惑と無関心をもって、ただ見つめているだけであるとすれば、抱ける希望など、ほとんどない。
 このデモの隊列はあなたを傷つけたり、侮辱したりするのが目的ではない。しかし、あなたはこの国を脅し、恐怖で震え上がらせ、最終的にはこの国の経済・社会制度や自立を、そして、必要であればその存在そのものを破壊しようとしている。従って、ここでいくつかの真実を思い起こさせることが私の基本的な義務であろう。
 あなたには自由や民主主義や人権について語る権利はまったくない。人類を破壊できるほどの権力を誇示し、それによって世界に独裁を押しつけようとしているからだ。そのためにあなたは、国連を無視し、また破壊し、いかなる国であろうと、その権利を侵害し、世界の市場や資源を独占するために征服戦争を実行し、人類を奈落の底に落とすような、退廃した、時代錯誤の政治・社会制度を押しつけている。
 あなたが民主主義という言葉を口にできない理由はまだある。あなたが米国大統領に就任したのはごまかしのためであることを世界中が知っていることもそのひとつだ。あなたは自由について語ることはできない。なぜならば、あなたは殺傷兵器による恐怖で統治された世界以外に知らず、しかもその兵器はあなたの未熟な手によって人類に向け、投じられるかもしれないからだ。
 あなたは環境について語ることも出来ない。なぜならば、人類が消滅する危険にさらされていることを見ようとしないからだ。
 あなたは、キューバの政治・経済制度を独裁であると非難している。だが、この制度によってキューバ人民の識字率や知識や文化は世界でもっとも発展した国のなかでも最高のレベルにまで高まり、また、乳児死亡率は米国よりも低くなり、住民は保健や教育、その他、社会や人間にとってきわめて重要なサービスを無償で受けている。
 あなたがキューバの人権について語るのを耳にすると、うつろで、こっけいに響く。
 ブッシュ氏よ、ここは、この45年間に、拷問や、死の中隊(訳注=極右テロ団体)や、超法規的殺人(訳注=軍隊による暗殺など)や、権力の行使によって百万長者となった政治家がまったく皆無の、西半球でも数少ない国のひとつなのだ。
 あなたにはキューバについて語る道徳的権限はない。ここは45年間にわたる凶暴な封鎖や経済戦争やテロ攻撃に耐え、そのために何千人もの命を奪われ、何十億という経済損失を被ってきた品位ある国なのだ。
 あなたはさもしい政治的理由によって、キューバを侵略している。そのために、何らの倫理も原則もなしに、衰退しつつある、背信者と傭兵の集団の支持を選挙で得ようとしている。あなたはテロについて語るためのモラルをもたない。なぜならば、テロという手段によって何千人というキューバ人を死に至らしめた暗殺者を周囲に配しているからだ。
 あなたは人間生活をまったく省みないことを隠そうともしない。なぜならば、世界における超法規的殺人をためらうことなく命令しているからだ。そのために死んだ人の数は知られず、また秘密にされている。
 あなたは、暴力的権力は別として、キューバ問題に介入し、体制の転換を勝手に宣言し、その実行手段をとる権利を、まったくもたない。
 このことは知っておくとよい。この人民を抹殺することは、すなわち、地球の表面から一掃することはできるかもしれない。だが、この人民は米国の新植民地という屈辱的状態に再び隷属することはない。
 キューバは世界の生命のために闘っている。あなたは死のために闘っている。あなたは、無差別な先制攻撃や急襲で数知れない人々を殺しているが、キューバは世界の何十万人という子どもや母親や病人や老人を救っている。
 あなたがキューバについて知っている唯一のことは、旧バティスタ派やその子孫からなる、腐敗にまみれた欲深いマフィアの、飽くことを知らない口から発したウソだけである。かれらは不正選挙のエキスパートであり、選挙に勝利するのに必要な得票ができなかった人物を米国の大統領に選出する能力をもっている。
 あなたが代表しているような不平等な体制においては、人間は自由とは何かについて知っているはずはないし、知ることもできない。米国では何人も平等には生まれてこない。アフリカ系やラテン系のゲットーや、かつてその地を居住地としながら、殲滅されたインディアンの保留区では、貧しく、排除されているという点だけが平等だ。
 わが人民は連帯と国際主義を学んでいる。したがって、米国人民を憎んだり、白人であれ、黒人であれ、インディアンであれ、混血であれ、あるいは多くの場合、ラテンアメリカ人であれ、米国の若い兵士が死ぬのを見たいと願ったりしない。失業こそが、彼らを軍隊に入隊させ、不意打ちや先制攻撃のために、あるいは征服戦争のために、場所を選ぶことなく、世界各地に送られているのだ。
 イラクの囚人に加えられた信じ難い拷問は世界を驚愕させた。
 私はここであなたを侮辱するつもりはない。これは前に述べたとおりである。ただ、少しでも時間があったら、もちろん、それはあなたにとってまったく愉快なことではないだろうが、誰かあなたの補佐官がこうした真実をあなたの前に示して欲しいと思っているにすぎない。
 われわれの運命のサイは投げられた、あなたは決定したのであるから、私は円形競技場に向かうローマの剣士と同じようにあなたに別れを告げたいと思う。「さあ、シーザー、死ぬ者たちがそなたに挨拶しているぞ」。
 ただ、残念なのはあなたの顔も見えないことだ。なぜならば、そのときには、あなたは何千キロも遠くに離れているだろうが、私は祖国の防衛のために最前線で戦っているからだ。
 キューバ人民の名において、
フィデル・カストロ・ルス
 
ブッシュとカストロ(2)
[1]イラクからキューバへ
 拷問事件の発覚、終わりなき戦闘や犠牲など、イラク情勢がますます混迷を深めているとき、突然、遠く離れたカリブ海でキューバをめぐり緊張が高まった。直接のきっかけは、米国で5月6日、カストロ政権の早期打倒のための措置が発表されたことである。これまで、米国ではカストロ国家評議会議長暗殺を公然と求める声も出ていた。そこへ、今度の発表であり、キューバではいよいよ米軍の侵攻かと警戒を強め、カストロ議長もそのときが来たならば、前線に立ち、死を賭して闘うとの覚悟を示している。
 この泥沼化したイラク情勢を米国はいかにして建て直すのか。世界の注目が米国の次の一手に集まっているときに、なぜ、今、キューバなのか、という思いを抱く人もあるかもしれない。しかし、イラク情勢が混迷を深めているからこそ、米国はキューバを攻撃しなければならないのである。
 「9・11事件」以後の米国の政策を厳しく糾弾する言語学者のチョムスキーも言うように、革命45年を経た今日においても、キューバは米国にとって依然として脅迫観念であり続けており、もっとも攻撃の標的としやすい相手である。再選を目指すブッシュ大統領にとってこの秋の大統領選挙の見通しは決して明るくない。イラク戦争の大義は失われ、終了したはずの戦闘も依然として続き、そのうえ拷問事件まで暴露され、国際的にも、国内においても、イラク戦争の正当性への疑問や「民主主義国家」米国への不信が高まっている。劣勢を挽回するためには、フセインと同じ、別の「悪者」を攻撃する必要がある。その点ではキューバは格好の標的である。  
 4年前の大統領選挙でフロリダの票を巡って混乱が続いたことはまだ記憶に新しい。フロリダ票の行方はブッシュ大統領の再選を左右する。これにたいし、キューバ人が多く住むマイアミの反カストロ強硬派は、大統領選挙までの時期をキューバ侵攻の最後のチャンスと捉えている。選挙に勝利するには彼らの要求を無視することはできないのである。しかも、かれらは富裕層であり、機嫌を損ねれば選挙資金にも影響する。
 ベトナム戦争を描いた映画「サルバドール」の監督オリバー・ストーンは、「米国はラテンアメリカ諸国をトイレのように扱っている。今年の大統領選挙ではキューバが争点になるだろう」と語っている。これは今年の4月にメキシコのホルナーダ紙のインタビューに答えたときの発言だが、彼は「カストロを求めて」というドキュメンタリーも制作している。カストロとの対話に、国内反対派とのインタビューを添えたもので、この4月に米国のケーブルテレビで放映された。事態はストーン監督の予想どおりに動いている。

[2]亀裂が深まる米国
 クリントン政権時代には、キューバ敵視という大枠は変わらなかったが、キューバ制裁法であるヘルムズ・バートン法の一部適用中止や、いかだで漂流した少年・エリアン君のキューバ送還、議員や財界人のキューバ訪問増加など、両国の関係は改善に向かった。これは、革命後、半世紀近く経ち、米国民全体にとっても、また、米国の政治にとっても、「キューバ」はそれほど重要な政治問題ではなくなったことを反映したものである。
 だが、ブッシュ政権の発足とともに再び緊張は高まった。とくに、「9・11事件」のあとはキューバを「テロ支援国家」に指定し、渡航制限(渡航者への処罰強化、渡航申請却下など)、キューバと経済関係をもつラテンアメリカ諸国への圧力強化、人権侵害糾弾など、キューバ封じ込め政策が強められた。
 ところが、2001年11月に史上最大といわれるハリケーン・ミシェルがキューバに襲来し、多大な農産物被害を出したとき、革命後始めて米国からの食糧輸出が再開された。これはハリケーン被害に対する人道的支援と規定されたが、その後も米国からの食糧輸出は増えつづけ、その額は2003年には3億4300万ドルから3億4700万ドルにも達した。2004年には12億にまでのぼると推定されている。アイダホ、アラバマ、アイオワなど、食糧輸出協定を結ぶ州も続々と登場し、2003年12月に行われた米国企業家とキューバの食料輸入機関「Alimport」との会合には257社の代表が参加するほどであった。政府の強硬姿勢とは裏腹に、ヨーロッパ諸国の進出に不安を抱く経済界のキューバ接近は強まっているのである。
 一方、議会においても、制裁解除を求める声が高まり、下院では制裁解除決議が採択されるまでになっている。ただし、ブッシュ大統領の拒否権発動問題もあり、日の目を見ていない。今回の新制裁案が発表された直後も、制裁解除派の議員の間から、制裁法の適用の是非については毎年議会で採択すべきという趣旨の決議を出す動きがでている。
また、キューバを訪問する市民は2003年中には国会議員も含め15万6000人、政府の認可の得られなかった非合法の訪問者は2万2000人から2万5000人に達した。ただし、これも2003年にはブッシュ政権による渡航制限のためにおよそ8%減少した。
 キューバ政策をめぐって、米国では政府と、企業家や議員や民間人との間に亀裂が生じていることになる。

[3]亡命キューバ人も分裂
 米国にはおよそ120万人のキューバ人やキューバ系市民が住んでいる。これまでは、マイアミのキューバ人亡命者を中心に反カストロ感情が強いと言われてきたが、様相は次第に変化しつつある。亡命者の世代交代によるところもたしかに大きい。近年、いわゆる亡命者の性格が変化していることもある。つまり、1980年代に大量難民事件が発生して以来、政治亡命者というよりも経済難民が増えているのである。そのため、今回のブッシュ政権の新制裁案、とくにキューバへの送金や渡航制限にたいしては、マイアミでは半数以上が反対しているといわれる。
 もちろん、マイアミでは、富裕層を中心に、キューバ侵攻を求める声も依然として根強い。富裕層であるだけに政治的発言力も大きい。強硬派の筆頭は「全国キューバ・アメリカ財団」だが、代表を務めていたホルヘ・マス・カノーサ1997年に死亡したあと、息子のホルヘ・マス・サントスがあとを継いだ。しかし、昨年2月に彼は、ロイターとのインタビューで、自由で民主的なキューバの実現のために、キューバ政府の役人をも含めたキューバ人による対話を提案している。もちろん、「カストロ兄弟を除いて」のことである。興味深いのは、対話が不可欠な人物として、リカルド・アラルコン国会議長、カルロス・ラヘ国家評議会副議長、フェリーペ・ペレス・ロケ外相の名を挙げていることである。
 この提案にたいしては財団内部を含め、強硬派の批判は強い。かつてのゲリラ司令官であり、20年の禁固刑のあと亡命したウベール・マトス(「独立・民主キューバ」代表)もその1人である。だが、人的にも、また資金的にも最大かつ最強といわれる反カストロ団体のこの姿勢転換はキューバ人亡命社会の変化を示すものであり、今後、他の亡命者団体へ与える影響も無視できない。
 この5月21日から24日まで、ハバナでは第3回「国と移民会議」(*)が開かれた。参加者は45カ国451人、米国からも200人以上がやってきた。いわば、海外に在住する体制支持派と反体制穏健派のキューバ人会議だが、かれらは制裁の解除や話し合いによる体制転換を求めている。そのなかでもっとも積極的役割を果たしているのは「キューバの変革Cambio Cubano」のグティエレス・メノヨである。カストロがシエラ・マエストラでゲリラ戦を展開していたときに、中部のエスカンブライ山中で独自にゲリラ活動を行い、ゲバラがハバナを目指して進撃してきたときには合流して戦った人物である。革命直後にカストロと決別し、およそ、20年間の米国での亡命生活のあと、昨年、合法野党の結成を目指して帰国した。

[4]侵攻はあり得るか?
 では、果たして米軍のキューバ侵攻はあるのかどうか。
 キューバ国内では「侵攻は間近」と緊張が高まっている。カリブ海における現在の状況、革命以来の米国の政策などを考えれば、キューバの危機感は十分理解できる。
 これにたいし、1990年代に大西洋軍総司令官を務めていたジャック・シーハン将軍は、「侵攻は成功しない。イラクと同じく情勢が泥沼化するだけだ。キューバ国内に米国の支持勢力は存在しないし、米国は武力制圧できるほどの軍事力を行使できる状態にないからだ」として、侵攻の可能性は低いとしている。
 しかし、1958年、すなわちキューバ革命当時のハバナ駐在米国大使であり、1980年代にレーガン政権の政策に抗議してハバナの米国政府利益代表部を辞したウェイン・スミスは、侵攻はともかく、軍事行動の可能性は否定しない。米国のさまざまな撹乱工作にたいしキューバ側が反応するのを利用して、軍事行動に踏み切ることはあり得るというのである。たとえば、今回、米国が発表した新制裁案のなかには、キューバ向け反政府宣伝放送の電波妨害を回避するために航空機を飛行させるという政策がある。キューバにとって、撹乱工作のために領空侵犯して飛来してくる米国機をずっと手を拱いて見つめているのは、あまりにも耐えられないことであろう。
 武力侵攻にたいしては、米国内部でも、また国際的にも批判も大きいであろう。だが、ここでも「いつか来た道」が取られる可能性が高い。つまり、イラクと同様、「独裁国家」、「人権侵害国家」というキューバのイメージを広め、内外において「民主化」のためには武力侵攻もやむなしという雰囲気を作り出すことである。実際、ヘルムズ・バートン法でも、経済的締め付け政策が挙げられているだけではない。人権侵害に関する国際的宣伝、亡命者や難民流出のための工作、反体制派への物的精神的支援等々を通じて、キューバの体制の「マイナス面」や「非人道性」を国際的に広め、世界で孤立させることも重要な政策の柱になっている。今回の新制裁案でも、キューバ国内の反対派と国際社会を動員することが強調されている。
 この政策はすでに始まっている。たとえば、今年の3月に国連人権委員会でキューバ非難決議が賛成22、反対21、棄権10の僅差で採択された。その経緯からも米国の政策が見えてくる。委員会においてラテンアメリカ諸国のうち、この決議に賛成したのはホンジュラス、ペルー、チリ、メキシコであった。ホンジュラスは貧しい親米国家である。これにたいし、米国は、人権決議採択の直前に「ミレニアム計画」、すなわち世界の貧困60カ国に55億の援助を与えるという計画にホンジュラスを含めている。一方、ペルーのトレード政権も経済情勢の悪化のため、IMFの支援に依存せざるを得ない状態にある。チリのラゴス大統領は社会党出身だが、ピノチェト軍事独裁政権以来の新自由主義経済政策によって経済は多国籍企業支配のもとに完璧に組み込まれている。しかも、近年、翳りがみえる高度経済成長を維持するためには米国の進める米州自由貿易圏の実現が重要だ。
 メキシコは米国への移民問題やNAFTAによる経済統合の問題を抱えている上に、フォックス政権は伝統的に国内大企業や財閥が握る民族行動党(PAN)に属する。今回の人権非難決議賛成投票のあと、カストロ議長がメーデーの演説で「革命国家メキシコも地に落ちた」と発言したため、フォックス大統領がハバナ駐在メキシコ大使の引き揚げと、メキシコ駐在キューバ大使の帰国を要求する事件が起きた。キューバにとって「メキシコが地に落ちた」のはこれだけではない。一昨年(2002年)3月のモンテレイ・サミット(国連資金開発会議)の際に、ブッシュ大統領とカストロ議長とが顔を合わせないようにするため、カストロの即時帰国を求めるという事件があった。その直前には、前カスタニェダ外相が「メキシコ大使館の門は開かれている」と発言したため、在ハバナ大使館に米国への出国を希望するキューバ人が押し寄せた。しかし、さすが「革命国家メキシコ」である。議会の強い反対を受けてフォックス大統領はブッシュ政権のキューバ制裁には加わらないことを言明している。

 ブッシュ政権の目的は「自由キューバ」の実現にある。彼にとって「自由な」キューバとは「新自由主義経済体制、外資の自由な活動、米国型代表民主主義制度」の導入であり、これに抗するカストロ政権は「独裁政権」となる。これにたいし、カストロ議長が5月14日に米国利益代表部前で読み上げた「米国政府のライバルの宣言」は、むしろ逆に米国政府の対外政策や新自由主義体制こそ、非人間的であり、飢餓や虐殺をもたらしていることを明らかにしたものである。1989年の「ベルリンの壁の崩壊」以来、「市場経済こそもっとも合理的であり、優れている」ことが「常識」となったが、既成概念に囚われることなく、現実をしっかり見つめることが必要だということであろう。

(*)ハバナで2004年5月に開催された第3回国と移民会議。
第3回国と移民会議
(神奈川大学教授・後藤政子)
ブッシュとカストロ(3)
ブッシュ政権の「キューバ早期移行政策」
 5月6日、ブッシュ大統領の諮問を受けて、自由キューバ支援委員会が「キューバの早期移行政策」を提案した。これは「新たな制裁措置」というよりも、題名どおり、カストロ体制の崩壊を早めるための政策である。しかも、経済封鎖などの、いわば「外部からの」締め付けだけではなく、キューバ国内の反体制派支援や、国連人権委員会等の国際機関や海外のNGOを利用して、「人権侵害国」、「独裁国」という国際的雰囲気を盛り上げ、孤立させた上で政権を崩壊させるという方法が前面にでている。
 それだけにキューバ側の緊張にはただならぬものがあり、5月14日にはハバナで120万人集会が開かれた。このとき、カストロ国家評議会議長は「米国政府のライバル宣言」を読み上げている。この宣言は激しい米国非難という形をとらず、キューバと米国を比較することによって、どちらが民主的か、どちらが良い社会か、を問うものになっている。新政策の意図を承知したうえでの、キューバ側の回答といってよい。
 今回の「新政策」は厳しい制裁を課してきたにもかかわらず、キューバの経済は回復軌道に乗り、カストロの国際的人気も衰えていないことにたいし、ひとつの決定的切り札を出したものである。
 キューバに対する米国の経済封鎖は、正式に宣言されたのは1960年12月だが、革命直後の1959年に農地改革法が公布された直後から、45年間にわたり続いている。とくに、父親の前ブッシュ政権時代には、ソ連消滅によってキューバがきわめて厳しい経済危機に見舞われたときに、カストロ政権打倒の最大のチャンスとみなして、「1990年キューバ民主主義法」(トリチェリ法)が制定された。これは、米国からの輸出入や融資等の禁止だけではなく、米系企業の海外子会社や、ヨーロッパやラテンアメリカ諸国など第3国にまで制裁の対象が拡大された点が特徴であった。それにもかかわらず、キューバは経済危機を乗り切り、ヨーロッパを中心に投資国も増えた。そのため、1996年には「1996年キューバ解放と民主連帯法」(ヘルムズ・バートン法)を制定し、制裁の対象をさらに広げ、強化した。このとき、キューバと取引を行う第3国の企業家にも制裁が適用されることになったことが、とくにヨーロッパを中心に反発を呼び、クリントン政権が適用停止を繰り返してきたことは良く知られている。
 今回の「新政策」の重点になっている「国内反体制派の支援」や「市民社会の育成」は、ヘルムズ・バートン法でも二大戦略のひとつになっている。ハバナの海岸通りにある米国利益代表部のケイソン長官は、自分の仕事は国内の反体制派を支援することにあると明言しており、しばしば会合を開き、利益代表部のフリーパスを与えられ、コンピューター、電話なども自由に使うことができる反体制派もいる。反体制派にとって米国利益代表部は最大の資金源であり、最大の拠りどころでもある。
 ドキュメンタリー映画「カストロを求めて」を製作したオリバー・ストーン監督は、インタビューでカストロ議長は「かれらは反体制派ではなく、傭兵なのだ」と答えたと言っているが、6月1日から実施されるこの「新政策」はこれを追認したことになり、キューバ政府と「反体制派」の関係はいっそう危機的なものになる。
 社会主義圏が消滅したあと、米国の対外政策は「独裁」と「麻薬」と「テロ」の撲滅を旗印にしている。今日のイデオロギー終焉の時代においては、新自由主義経済政策に組みしない政権や勢力は「独裁」、「人権蹂躪」、「ナルコ(麻薬)テロリスト」として、排除されるべき対象とされる。今回の「新政策」もこの路線に沿ったものだが、自由や民主主義の擁護、麻薬撲滅などは、国民の倫理観や感性に訴えるものであるだけに、冷戦時代よりも事態は複雑になっている。
 チョムスキーが言うように、インテリやマスコミを利用した世論形成など、現代における情報操作はきわめてソフィストケイトなものになっている。イラク戦争はその良い例であろう。キューバにたいしても、今年3月の国連人権委員会における決議採択に見られるように、国際的世論づくりはすでに始まっている。グランマ紙上では、EUがなぜ米国に追随するのかについて、拡大EUの構成から分析しているが、こういう声は世界になかなか届きにくく、キューバの人権侵害を批判する国が増えているという印象のみが世界に広がっている。
 キューバはブッシュ政権の「新政策」に危機感を強め、「政権は消滅しても革命は残る」と覚悟を表明している。45年間にわたる経済封鎖に耐え、国連でもようやく圧倒的多数の諸国が制裁解除を求めるようになった今、再び、米国の厳しい攻勢にさらされることになった。
 このように、米国の自由キューバ支援委員会の「キューバの早期移行政策」にはきわめて重要なものがある。そこで、以下にその一部を紹介したい。400ページを超える膨大なもので、全6章から成り、第1章は早期移行実現のための政策、残り5章は移行期政府に関する米国の政策となっている。今回の政策の意図を明らかにするため、ここでは第1章を掲載する。
 なお、キューバ共産党機関紙「グランマ」紙でも一部、紹介されたが、翻訳にあたっては米国国務省国際情報プログラム事務所が配布した要約を利用した。
(神奈川大学教授・後藤政子)
 
2004年5月6日
キューバ国民解放のための新措置を提案する
(自由キューバ支援委員会の提案)

第1章 キューバの早期移行の実現


 フィデル・カストロ政権の独裁に反対するキューバ人民を支援するという米国の約束を履行するためのひとつの本質的措置として、ジョージ・W・ブッシュ大統領は自由キューバ支援委員会にたいし、米国がカストロ独裁を早期に終焉させるための新措置の策定を要請した。

 過去における米国のキューバ政策は、互いに連携がないまま、ばらばらに実行された。たとえば、経済制裁は、初期においては、キューバの市民社会にたいする支援についてまったく、あるいはほとんど、配慮しておらず、カストロ政権による情報活動の妨害をはねのけ、あるいは国際社会を積極的に関与させるようなイニシアチブとも結びつきがなかった。また、人道的政策も、意図は優れてはいても、キューバ国民支援政策の基本的目的、すなわち、自由と、キューバ国民みずからがその生活形態と将来を決定する権利の回復とにいかに資するかを然るべく考慮することなく、認可されていた。

 本委員会は、カストロ体制の生き残り戦術の息の根を止め、キューバ国民を支援することによって独裁の早期終焉を実現し得る状況を作り出すための、いっそうダイナミックかつ総合的かつ高度な方法を考察した。われわれの提案は、米国政府の裁量範囲である活動と、国際的な支援努力のための確固たる基盤を形成し得る活動に焦点をあてた。この総合的枠組みは、変革の促進にとって基本的であると考えられる以下の、相互に関連し合う6つの作業から構成される。

 キューバ市民社会のてこ入れ:カストロ独裁は社会的な脅しや、誤った政策にたいする決定的オルタナティブの成立を阻止することを通じて、キューバ国民の抑圧的統制を維持してきた。カストロは、45年間にわたり、いかなる自立的活動も解体するという戦略をとってきた。その結果、市民社会は分裂し、弱体化している。弾圧は絶えず、拡大してきたために、自立的活動の発展が失敗に終わってきたからである。キューバ経済の絶対的統制と米国の移民政策の不正操作によって、カストロ政権は人権活動家や改革派の活動をほぼ不可能とし、多くの人々に亡命を余儀なくさせてきた。
 いまや、世論の動向は変化し、カストロ一派はキューバ国民が組織をつくり、変革と自由という要求を表現するのを阻止するべく、絶えず努力していなければならなくなった。キューバ人は日ごとにその恐怖を振り払い、みずからの運命はみずからが決めるという願望を表明している。民主主義を求める反体制派を支援し、成立しつつある市民社会に力を与えつつ、カストロ政権を孤立させていけば、米国はキューバ国民が望む積極的な社会・政治変革を実現できる。キューバの市民社会に活力や意思や決意が欠けているのではない。物質的資源や、変革の実現に必要な支援が得られないために、力を発揮できないだけである。

 キューバ独裁の手になる情報活動妨害の打破:カストロ独裁は国内の宣伝やコミュニケーションのための正規の手段をすべて統制下に置いている。キューバ共産党は新聞、テレビ、ラジオにたいする厳しい編集統制を行っている。それは広範な抑圧メカニズムを通じて実行されており、そのためにキューバ国民はキューバ経済の状況や、体制による人権や基本的自由にたいするシステマチックな侵害などの問題について情報を入手することができない。カストロ政権は、キューバ国民に情報が生のまま流れ込むのを恐れて、内外の民主主義を求めるグループや、一般的には市民社会が、キューバ国民に有効な形でメッセージを伝える力を阻害するための行政機構、技術機構、情報活動機構を打ち立てた。したがって、キューバにおける市民社会を強化し、また米国政府のラジオ放送機関により開始されたすばらしい活動を継続するための努力は、キューバ国内や全世界の出来事について信頼に価する情報をキューバ国民に届け、またカストロ政府の誤った政策にたいする民主的オルタナティブを提示する努力を支援するためのメディアと結びつけなければならない。

 キューバ独裁に向かう資金の遮断:カストロ政権の政策はキューバ経済を弱体化し、国民を貧困化させた。キューバ人が被っている物資不足を改善するどころか、まさに厚顔にもみずからの義務を顧みることなく、権力にしがみつくために、海外の関心を掻き立て、キューバや、キューバ国民への人道援助を提供させている。カストロ政権は観光業、ベネズエラ石油への特恵的アクセス、基本的生産物、国内に親類を持つ人々によって生み出された所得やその他の援助のおかげで一息ついている。この援助のほとんどは米国から寄せられている。1990年代にカストロ政権は米国の政策の人道的側面を利用するメカニズムをつくりあげた。実際、ここから数億ドルを引き出すことができる。海外からの送金や贈り物や国内に親類を持つ亡命者(とくに1990年代初頭以来、米国に到着したキューバ人)の渡航によって得られる収入は、政権がキューバ住民の生活を他人の力で支えるための手段となっている。これらの手段を通じて得たドルは住民の基本的必要を満たすためには使われず、抑圧機構を維持し、強化するための資金となっている。贈られたドルや物資は、米国市民が善意で提供したものであるにもかかわらず、政権が前進しつづけるために寄与していることになる。したがって、米国としては、米国市民とキューバ国民の間のコミュニケーション・ルートを維持し、キューバ国内に親類を持つ人々が合理的な形で援助できるようにし、同時に、キューバ政権が人々の物質的苦境を操作したり悪用したりするのを最小限にとどめるような政策をとらなければならない。

 カストロ体制下のキューバの現実を知らしめること:現在、政権が生き長らえているのは、ひとつには、彼らが世界に好ましいイメージを振り撒いてことによる。すばらしい観光スポット、バイオテクノロジー発展の中心地、人々の生活水準を改善し、教育、医療サービス、人種関係では世界のモデルである社会主義国家として、国際的に売り出している。こうしたイメージは、キューバの真の政治的、経済的、社会的状況や、キューバ国家がテロ推進していること、指導者がますます異常な行為に走っていることを、見えなくしている。

 キューバの市民社会を支援し、カストロ政権を貶めるための、国際的外交努力を促進する:カストロ政権の性格や、キューバにおける基本的な政治的経済的変革の必要性については、徐々に国際的コンセンサスができあがりつつある。こうしたコンセンサスが形成されたのは、主として民主主義の平和的推進者に対する2003年3月および4月の野蛮な弾圧以後のことである。これは平和的政治活動家にたいするキューバ史上もっとも激しい弾圧であり、また、全ラテンアメリカにおける、ほぼ10年来のもっとも意味深い政治的弾圧であった。カストロ政権がこのような反応をしたのは、キューバ国民や国際社会とのつながりを維持しつづけるというこれらの活動家の勇気ある行為に激怒し、またそれを恐れたためであった。EUその他の諸国に対するカストロ一派の政治的攻撃も、政権が基本的権利の行使というキューバ国民の平和的な要求に不安を抱いていることを暴露するものであった。当時、カストロを支持した人々の多くは、今では公然と政権の権利濫用に反対を表明し始めている。だが、こうした国際的コンセンサスには限界がある。したがって、われわれのカストロ体制早期終焉政策の基本は、国際機関においてキューバの体制について疑念を表明するための多角的な国際努力を促進すること、そして、民主主義を求めるキューバのグループを積極的に支援する政策を強化することでなければならない。国際労働機構や国際人権委員会をはじめとする国際機関はキューバ人が生き残りのためにいかに生き、闘っているかを明らかにするための格好の場である。

 政権の「継承計画」をつぶす:カストロ独裁は「継承計画」によって、できる限り政権の生き残りと長期化を図ろうとしている。この「継承計画」では、統治権はまず、フィデルからラウル・カストロへ、その後は別の人物へと移る。これは非民主的な共産主義エリート、すなわち、現在、選挙によらずに権力を握っている者たちの永続を目的としたものである。米国はキューバにおける共産主義独裁の継続に反対する。したがって、本委員会としては、支配エリートへの圧力行使と、支配エリートをターゲットとすることに焦点を当てた手段をとるべきであると考える。これらのエリート集団や、あるいはそのメンバーによる政権の継承は、自由とキューバの民主主義にとっての障害であることを忘れてはならない。

提案のいくつか

* 国務省、USAID、その他の米国政府関係機関にたいし2900万ドルを追加供与する(現在のキューバ計画予算700万ドルを増加するため)。これは以下の点を目的としたものである。

* キューバにおける市民社会の保護と発展を目指す国際資金設立を支援するため第3国と協力する。
  この資金は、政権のために活動していない独立系図書館、専門機関、慈善団体、ジャーナリスト、教育者、医師を援助する目的でキューバに渡航するさまざまな国籍のボランティアを引きつけ、訓練し、資金や資源を供与するために使われる。

* 反政府派家族に教育の機会を提供するプログラムに資金供与する。また、米州機構と協力し、キューバの反体制派がラテンアメリカの大学で勉強できるよう大学留学者計画をたち上げる。

* 青年、女性、アフリカ系キューバ人の民主化努力を支援する計画に資金供与する。その目的は、これ らキューバ社会から孤立し、疎外された部分の能力を高め、強化し、組織化することによって、キューバの民主主義と人権の支援にとってアクティブな人々とすることにある。

* 航空ステーション「C130 コマンド・ソロ」の即時展開を命令する。さらに、国際通信に関する米国の義務と両立するような形で、マルティ・ラジオ=テレビのキューバ向け放送のための航空ステーションの購買と調整のための資金を追加する。

* キューバへの観光旅行を阻止し、かつ政治犯や市民社会を含めたキューバ国民の困難な状況について国際的関心を高めるための広範な努力の一部として、一定の第3国のNGOの活動を支援してキューバの人権侵害状況を広く知らせていく。

* 教育目的の渡航の濫用を阻止し、資格を得るための学部および大学院の教育機関と、完全にアカデミックな6ヶ月間の学習プログラム、およびそれ以下の期間の学習プログラムについては、米国の政策目的を直接支援するプログラムにのみ限定する。

* 米国の法執行機関にたいし、「ラバ」その他の非合法の送金を阻止するための隠密作戦を実行するよう命令し、また、非合法送金を告発した人々には、その告発によって法の執行が可能になった場合、報償を与える。

* 親族の訪問を外貨獲得に利用するカストロ政権のごまかしにブレーキをかける。同時に、合法的な親族のきづなと、キューバ国民への人道的援助を促進するための努力については以下の形にとどめる。

* 親族のキューバ渡航は3年間に一度に制限し、そのためには特別許可を求める。特別許可は最終渡航から3年後に申請できる。キューバから最近到着した者はキューバ出国から3年後に特別許可を申請できる。

* 親族の訪問に関しては「親族」の定義を最も近い者(祖父母、孫、両親、兄弟、配偶者、子)に限る。

* 旅費(キューバ渡航のための食費と宿泊費として許可されている額)を現在の164ドルから1日50ドル(これは1人のキューバ市民が渡航14日間に稼げる額のほぼ8倍である)に削減する。これはすべての在キューバ親族訪問に適用する。この削減は、渡航者はキューバではその家族のもとに宿泊するものと想定されているためである。

* キューバの自由と民主連帯法(訳注:ヘルムズ・バートン法)第3章の適用にあたっては、大統領が法に規定されたすべての選択肢を自由裁量できるようにするため、また、その停止が米国の国家利益を守るために必要であるか否か、さらにキューバの民主主義への移行を促進できるか否かについて評価できるようにするため、大統領にたいしてキューバに関する政策や行動について厳密、詳細、かつ完全な分析が提供されるよう、保証しなければならない。

* キューバにおける接収資産、すなわち、米国市民がその所有者であると宣言した資産への外国投資を抑制するために、そうした資産を扱う(すなわち、それを利用し、あるいはそこから利益を得る)外国人にたいし第4章のビザに関する制裁を断固として適用しなければならない。また、この法律の適用と履行のためにさらなる資金や人員を配置しなければならない。

* キューバ政府の偽装企業を、キューバ資産評価グループを設立することによって、無力化する。この評価グループにはキューバにおける外貨の流出入形態を調査する関係機関の人員が参加する。

* 米国大使館の外交活動のために、500万ドルを追加融資する。その目的は以下のとおりである。

* 米国の対外政策、とくにキューバにおける人権問題を中心とする事件に関する政策について、海外で広報活動を行う。これには、テロリストの迎え入れ、米国その他の諸国にたいするスパイ活動、ラテンアメリカにおいて民主的に選出された政府の崩壊促進などに関するカストロの履歴や、キューバは少なくとも化学兵器に関して一定レベルの研究を行っているという米国政府の確信についても含まれる。

* キューバ移行支援計画作成努力に関する米国の政策について海外で情報を広めるために、国際会議や国内会議(第3国におけるもの)に資金を援助したり、推進したりする。

* (1)反体制派を含めたキューバ市民社会を支援するためのダイナミックで、確たる政策を適用する用意のある第3国政府と直接提携して協力し合い、(2)独裁以後のキューバ支援のための法的枠組みを発展させる。

* キューバの独立系労働代表、ないしは亡命中の労働組合代表が、国際労働機関の会議で発言できるようにするため、NGOその他の関係グループと協力する。

* キューバにおける労働者の搾取状況を明らかにし、労働者がこの種の蹂躪にたいする補償を得られるよう支援しているNGOの努力を支援する。

* キューバ市民の米州人権委員会への効率的アクセスを支援しているNGOのプロジェクトに資金援助し、適切なNGOを通じて、人権委員会に要求を提出するために必要な情報を入手したり、準備したりできるよう、キューバの人権活動家のキューバにおける能力を高める。

* 政権の役人が、(1)拷問その他の人権侵害に現在または過去において荷担している場合、および(2)米国の裁判からの逃亡犯を幇助したことがある場合には、ビザを拒否する。

* 国務に移行のための調整官を任命する。調整官の役割は、民主主義のためのプロジェクト、外交プロジェクト、キューバにおける市民社会発展プロジェクトの広範な適用を容易にすること、および移行期間中の援助において不測の事態に対処するための計画との継続性をはかることにある。

第2章 保健、教育、住宅、人的サービスの基本的必要を満たす(省略)
第3章 民主的機関、人権尊重、法治国家と司法、国民的和解の確立(省略)
第4章 自由市場経済の基本的制度の確立(省略)
第5章 インフラストラクチャーの近代化(省略)
第6章 環境悪化の調査と改善(省略)
 
 
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